カウベル母娘の挑戦
憧れのオープンガーデン。(その1)
「盲、蛇に怖じず。」とはよく言った。これは庭好きでせっかちなおとうさんのことを皮肉った言葉に違いない。
「あなたは我家の庭しか見てないからよく分かってないのよ。もっとよそさまのお庭を拝見させて頂いてからでも遅くないわ。まだそんなレベル(?)ではないと思うの。ぜったいに!!」とカミさん。せっかちであわて者のおとうさんを、冷静な思考で、もうしきりに牽制してくれていました。
主役のお客さまが去って、ポツンと取り残された自宅庭。 |
そんなカミさんの忠告を振り切って、無謀にもつい、ほんとに軽い気持ちでつい、つい宣言してしまった、「オープンガーデン」!!
不安におののくカミさんに、いささか後悔の気持ちが頭をもちあげてきたおとうさんだったが、この情報はインターネットによってYB岡山のホームページにUPされてしまった。も、ももももう手遅れである。あ〜ァ、どうしよう!?
カミさんが言うように、「庭公開」なんて経験もなければ予備知識もなにもない。
今となっては「庭後悔」である。おとうさんはもう絶体絶命のピンチに立った。
一体、どうすればこのピンチ切り抜けることができる!?
さあ、どうする?どうする?さあ、さあ、さあ〜???!(・・;)
5月4日は、我家にとって「メモリアルデー」となった。その日 初めてのオープンガーデンが、なんとか曲がりなりにも無事 終わってくれた、その夜、YB岡山の庭番モグラさんからメールが届いた。
「勇気を出してよく踏み切られました。まだオープンしていない方々に、その勇気を与えてあげるため、オープン初体験記を書いてくれませんか?」
う〜ん!だってもう無我夢中だった。記念の写真すら1枚も撮る余裕がなかったほど、あわただしく1日が終わった。準備と接待でいささかお疲れのカミさんはといえば、それでもまだ興奮気味で、広島から手伝いに帰ってくれていた娘との会話は、今日1日の出来事でいつまでも尽きない。
「モグラさん勘弁してよ、自業自得!?身からでた錆!?もう赤面の思いに反省しきり、頭の中にはなんにも残っておりましぇ〜ん!」 と、そのときは思った。
翌日、5月5日の昼下がり、それまでは存知あげなかったYB岡山のメンバーであるYご夫妻が突然、我家の庭にお越しになった。
庭をご案内しているうちに、奥様は相当花庭づくりに年期の入った方だとすぐに察しがついた。
そして、おとうさんのようなせっかちではなく、園芸の趣味を通して、有意義な人生設計を確立しておられる、どことなく思慮深い、心に奥ゆきのある方だとお見受けした。
5月のYさんの庭はメルヘンの世界だ。 |
こどもの頃から、図画工作だけは得意だったおとうさんが、暇にまかせてこつこつと仕上げたユニーク(?)な造作物や、カミさんが丹精に育てた花々(決して珍しい品種はない)を興味をもってご覧になって帰られた。
奥様ほど花庭に興味をお持ちではないとお見受けしたご主人様も、おとうさんの造作物には興味をもってご覧のようで、お帰りの際その目が、なんとなくかがやいて見えたのが印象的だったのだ。
それからほんの数日後、Yさんご自身が、YB岡山ホームページでオープンガーデンを宣言された。
オープン当日、もちろんおとうさんはカミさんと娘に付いてYさんの庭を訪れた。
そこには、おとうさんが想像していたとおり、年期の入ったセンスのよい花庭があった。アンティークなガーデングッズがさりげなく随所に置かれており、それが幾種類もの草花たちとマッチして、メルヘンチックな雰囲気を醸し出している。まさに夢の花園のようである。
その花園の中でオーナーのY夫人は、終始エンゼルのようなにこやかな笑顔で、大勢のビジターの応対をされている。
まるでこの花園に棲むニンフ(妖精)のようである。
応対を受けたビジターは、その誰もが、夢のような花園の中で、幸せな時間を拝借できた喜びに浸っている。
やがて、母娘とおとうさんたちを見つけられたY夫人が近寄ってこられ、
「とうとうオープンしました。カウベルさんのお庭を拝見して急に勇気が湧いてきました。主人も、とても刺激を受けて応援してやる、と云っていますわ!」と、気持ちのいい笑顔でおっしゃった。
それは幸せに満ち溢れた笑顔でとても印象に残るものだった。
花の妖精が棲んでいるようなYさんの庭。 | Y庭のアンティークなテーブルを花々が取り囲む。 |
カウベル母娘が憧れていた「オープンガーデン」!おとうさんの気まぐれから、予期せぬオープンを母娘に初体験させてしまった。
しかし、その結果が偶発的にY夫人をして、素晴らしいオープンガーデンを大勢の人々に提供せしめたことにつながった。
そして今度はそのことが、おとうさんをしてこの手記を書くことへの勇気を与えてもらっている。
「どんなに狭い場所でも庭が欲しい。家に庭があってこそ家庭なんだから」
と云った庭好きの人がいた。
どんな植栽が植わった庭であれ、どんなデザインの庭であれ、持ち主が丹精を込めた庭には、夢と幸福が潜んでいる。
その夢と幸せを持ち主だけで独占してしまっていいのだろうか?
新しい庭、年期の入った庭、それぞれに持ち味がある。庭は生き物であり四季を通して変化する。そして年々成長する。それだからこそ今が最高!といった完璧の庭はありえない。常に発展途上にあると考えるべきだろう。
憧れだった「オープンガーデン」を「夢」に留めず、勇気をだして実践した。
その結果、未知の悦びを味わうことができた。いささかでもその実感を未体験の方々にお伝えしたいと思うようになった。
(つづく)
憧れのオープンガーデン(その1) (その2) (その3) (その4)
第1話 出雲路の旅 第2話 土佐浜街道 第3話 デジカメ探訪