カウベル母娘の挑戦
憧れのオープンガーデン。(その2)
母娘が憧れる「オープンガーデン」。いつかそれに相応しい見応えのある庭が形成されることを夢みて、少しずつ植栽を増やしていた庭。
そんなおりもおり、せっかちなおとうさんの気まぐれは、母娘の大切な夢を、見事に打ち砕いてしまったかに思えた。
しかし、勇気と努力で体験した「オープンガーデン」は、庭好きの親娘に多くの素晴らしいものを与えてくれた。以下はその体験記である。
☆ おとうさんの決断。
気まぐれとはいえ、一旦発表した宣言は取り消せない。
しかも1週間の余裕しかないのだから、いかにせっかちかが想像できる。
おとうさんは、これまでにも何度かピンチに立った経験がある。
そのたびに、懸命な努力でピンチをなんとか切り抜けてきた。才覚に恵まれない者には努力しかないことをよくわきまえているのである。
自分が蒔いた種は、自分で責任をもって刈り取らねばならぬ。
「物事は、やるからには悔いの無いようにしよう。何を、どうしたらいいのか?を、先ずはっきりとさせておくべき。」おとうさんは決心を固めてオープンディに備えることにした。
☆ なぜオープンするのか?
事態の展開をすばやく把握するときは、5W1Hに当てはめてみる。
この簡便な方法で頭の中を整理すると分かりやすく説明がつく。
その中で、おとうさんが好きなのは、WHY、なぜ?なぜ?なぜ?である。
@ (WHAT)自宅庭をオープンする。
なぜ? まず体験ありき!!体験ほど有効な勉強方法はない。
A (WHEN)5月4日(休日)にする。
なぜ? 下の画像をご覧いただきたいのです。
5月の庭ときたら、2週間でこんなにも色と形が変化するのだ。
白い庭は2週間で黄色の庭に変貌する。そして植栽は花を咲かせるために背が伸びて、葉色が衰えてくる。荒削りでダイナミックな自宅庭は、花よりも生き生きとした葉色の方が映りがいいと思ったからだ。
5月3日撮影 | 5月18日撮影 |
でもそれだけ? おっと!まだあった!週間天気予報ではその日は晴天の予測だった。(ところが、半分外れてしまったわけね。(?_?)5月の予報は信じる方がわるい!)
B (WHERE)野菜畑を含めて自宅庭のすべて。
なぜ? お天気にかかわらず、休日は殆んどアウトドアーにいるおとうさんであり、カミさんである。庭だけを正面からお見せするだけの自信はありませんが、あちらこちらにこだわりの欠片がころがっているかも知れないからだよね、きっと。
C (WHO)母娘とおとうさんで対応。
なぜなの? だって、宣言して1週間後のオープン!!しかもGWみなさん予定がいっぱい!3人居れば失礼はないでしょう。
D (WHY)???
なぜオープンをすることにしたのか?
う〜ん!?なぜだろう?せっかちなおとうさんにも、本当にまだよく分からないのだけれど、つまりこういうことにしよう。
昨年の5月下旬、オープンされた或るプライベートな庭を訪れた時のことである。
門を入ると狭いけれど、品のいい花庭がある。咲いている花々の色は白がベースになっていて、派手な色合いは極力おさえたシックな取り合わせで見た目に落ち着きがある。植栽はみな生き生きとしていて、見る者に生気を与えてくれる。
そして、その花のどれかがそこらじゅうに、芳しい香りを放っている。
思わず、奥のテラスにある椅子に掛けさせていただいた。よく冷えたお茶を頂いている間、庭の片隅にしつらえられた小さな人工池から流れ落ちる水の音や、背後の林から聞こえてくる野鳥の囀りが、自然の音響効果となって、その庭に居ることがまるで楽園(パラダイス)に居るような申し分のない居心地にさせてくれる。
そのときである。おとうさんの気持ちをこれまでに、こんなにも駆立てている庭造り、その「庭」というものの正体!?一体「庭」とは何なのか!?
を、なんとなく解らせていただいた記憶がある。
なぜ?自宅庭のオープンを宣言したのか、明確な回答はできないけれど、その時の記憶に残っている「庭」の正体(本質)に少しでも迫ろうと努力している過程を、自分以外の「庭好きな人」に見ていただきたい、と思ったのだろうか。
そういうことにしておこう。
それと同時にイエローブック岡山のコンセプトである、
「自分が思いつくままに作る庭から、他人に見せる庭を創るということは、客観的に庭を見直すチャンスになる。」
この考え方に、おとうさんは背中を力強く押して貰った気がする。
E (HOW)???
どのようにして来庭のお客さまを接遇したらいいのか?
(このことは、体験してみて勉強になったことが多い)
ここが未経験者の一番つらいところだった。おとうさんには手がかりになる材料がなにもない。途方にくれていると、カミさんから助け舟がきた。
「折角宣言したからには3人で力を合わせてやらなくちゃね!!」
まだ早い、と言っていたカミさんのほうが張り切っている。
「ここにこんなことが書いてあるわ、このとおりにやってみたい!」
カミさんが差し出したのは庭園雑誌「BISES(1997春号)」の中の1ページだった。
そこには,本場イギリスの「イエローブック物語」と題して次のような1節が載っていた。
NGS(ヘルプ1)の活動は、ガーデンオーナーたちの無償の好意に基づいています。ジル・コウレイさんもNGSを支援するひとりです。
ジルさんが夫のデレックさんとふたりで作り上げた庭は、エセックス州にある広さ2エーカーの古い農場跡。花と緑が美しく寄り添う夏の週末に、ふたりは丹精込めた庭を公開して、世界各国からのお客さまを迎えます。
オープンガーデンの日は早起きをして、芝生や花壇、ガーデンルームをチェック。お客さまのためにおいしい紅茶を選び、ティータイムに添えるケーキを手作りします。
「古い日記を読むと『もう2度としたくない』などと書いてあるのですが、いざその日が終わると『あと1,2回ぐらいはいいかしら』と思えてしまうの。それがずっと続いてきたわけです」と、ジルさん。
「でも、たくさんの人々に庭を楽しんでもらうことが、デレックと私を幸せにしてくれるのね」と、やさしい微笑みを浮かべます。
このページに目をやったおとうさんは、オープンガーデンの心構えはこれで整った。と、安心したのだが。
(つづく)
花よりも葉色の生き生きとした時期を選んだ。 | |
(ヘルプ1)
「ザ、ナショナル、ガーデンズ、スキーム、チャリタブル、トラスト」の略。オープンガーデンをした庭主は、入場料収入をNGSに寄付し、NGSはその寄付金で、看護協会やガン研究財団などの公益団体を援助している。
憧れのオープンガーデン(その1) (その2) (その3) (その4)
第1話 出雲路の旅 第2話 土佐浜街道 第3話 デジカメ探訪