Open Garden

先輩会員のガーデニング術に学ぼう!

オープン2回目を迎えたイヴリン庭から



 ことしは大勢の方々がご入会くださりイエローブック岡山のOG(OPEN GARDEN)は華やかだ。

庭好きが高じて、暇を見つけては庭いじりに余念のない私にとって、OG見学こそ、「百聞は一見に如かず」のたとえ通り、ガーデニングの技(わざ)を磨くには絶好のチャンスとばかり手ぐすねを引いていた。
ところが、シーズン最中というのに本業が忙しくなり、加えて不安定な天候が続いて気を揉んでいたところ、やっとチャンスが到来して訪れた庭は、浅学非才駆け出しガーデナーにとって、それは見事な教材の宝庫であった。


☆ OGの醍醐味を味わい学ぶ。

(写真1) カラーコーディネートされた庭に見る人は目をみはる。
背景のオーナメントには演技指導が??(北側から撮影)
 プライベートな庭は、庭主と花々や草木どもが思い切り遊び戯れる場所であるから、庭主以外の専門業者の力を介入すべきではないだろう。自分で工夫し自分の考えでこつこつと時間をかけて作ってゆくところが面白いのだ。この点が日本式の庭づくりとちがうし、そこは観光庭園ではなく、植物園や公園や農園でもないからだ。もっとプライベートに独自の感覚に彩られた、めったに他人には見せない秘密のパラダイス?そう自分ひとりで独占し、誰も入らせたくないほどの愛着があり、独自の趣向を思い切り凝らした庭でありたい。

 OGの醍醐味は、普段は公開していない、あくまでもプライベートなそんな場所を、一番見ごろな数日を選んでみなさんに見ていただくところにある。

 そして私のようにいつまでたっても新米のへぼなガーデナーにとって、それは貴重なガーデニングの技(わざ)習得の場になるのである。

☆ ノエルさん(♂)の「ロンドンで一番小さな庭」
 

 1995年の「BISES」冬号(No22,80P参照)でこの取材記事を読んで以来、私は自分の庭づくりに彼の技(わざ)を参考にしようと試みた。ところが演技力のない悲しさである。

 ロンドンに住むアンソニー・ノエルさんの庭は広さ62uだから日本では狭い庭ではない。写真で拝見すると、若い頃俳優だった彼の庭はまさに演劇的、主役の植物や植木鉢を使って彼らに演技を指導し、背景にも気を遣うというからまさに舞台演劇そのもの。それこそ見る者に感動を与える庭であり、年2回のOGの日には長蛇の行列ができるそうだ。そのロンドンで一番小さな庭を見るために。
(写真2) パステル、オリーブ、ディーブ、エメラルドグリーンなど、グリーンリーフの演出は素晴らしい。(西側から撮影) (写真3) 庭主の遊び心が随所にちりばめられて楽しさがいっぱい!

☆ イヴリンさん(♀)の庭にノエルさんのガーデニングテクニックを見た!

(写真4) おしゃれで愛らしい花の咲いたアブチロンのブラインド。
 室内からも眺めて見たくなる。
 イヴリンさんの庭はおよそ40uあり、独自の感性を思い切り庭に表現するにはもってこいの広さである。イヴリン庭もまた今年「BISES」早春号(No28,64P参照)に紹介されたのでご覧になった方はお分かりと思うが取材を受けたのは丁度1年前の今頃である。

 あれから1年の時が流れて、庭はコクのあるスコッチウイスキーのように味わい深く成熟していた。


☆ 大胆且つ繊細な演出が目を奪うアトリエの庭。

 道路から庭に向かって、ご主人の労作美しいモザイク模様に2種類のレンガが敷かれたアプローチがある。そこを進んで左手の薔薇のアーチをくぐると思わずハッ!と足を止めてしまう。そこは緑のアトリエである。中央に台座のついたアイアンの鉢がおかれ、それを取り囲んでサークル状に分厚い英国製ブラッドストーンが並べられている。

 中心のアイアンポットでは、シルバーサントリナ、アリッサムが銀色に輝き、その周りをリボンガヤ、フランネル草、カンパニュラ、ジギタリス、セダムなどホワイト系の葉と花が取り囲みさらにローズマリー、ギボウシ、フォックステール(ねこやなぎ)紅葉などが見る人の目を奪うのだ。(写真1参照)

 サークルの外側(写真2参照)に目をやると、右手前からアスチルベ、ヘリクリサム、メドウセージ、サルビアアズレア、ベロニカなど、グリーンリーフのカラーコーディネートはあたかも円形のパレットに絵の具を並べたようだ。そして背景に銅葉の枝垂れもみじを配して、見る人はこの演出に感動を覚える。
さすが、絵画も堪能な庭主のなせる技(わざ)である。

☆ 遊び感覚がギャラリーを楽しませてくれる。

(写真5) こぼれ種で密集した草花は上手く整えられて自然の優しさにあふれている。

イヴリン庭にはオーナメントに工夫がこらしてある。たとえばあのノエルさんが植木鉢にペンキでストライプ模様を施して特徴づけたように、ただ置いているのではなくまさに演技指導をしているのである。(写真1を参照)

 このほうが見ていて楽しくなる。写真には写ってないがイヴリン庭に蛙の形をした緑のジョーロが何気なく置かれていた。ふと見るとその上にある薔薇の花びらの中で緑の小さな生きた雨蛙が休んでいたりして楽しさがいっぱいである。

 また、イヴリン庭には英国庭でよく見かけるベンチがあるが、ブルーのペンキが塗られている。(写真8参照)イヴリンさんはブルーがお好きなようだ。なんでも一昨年訪れたヒドコート・マナー庭のそれに魅せられたとお聞きしたが、イヴリン庭にはこの青色が良く似合う。英国のケンブリッジ、オックスフォード両名門大学のスクールカラーがそうであるように、英国で青色は知性の象徴でもあるようだ。澄み切った空のようにこの色は気分を爽快にしてくれるから私も好きな色で、ぜひ庭に配色してみたい色である。

☆ 目を惹く壁面や窓辺のガーデニング。

(写真6) 8年目になるラベンダー・ドリーム(モダンクライミングローズ)は大きな鉢植えにして、足元には太陽がよく届く。
  つる性の植栽でおしゃれに壁面を飾った庭は、見る側に強いインパクトを与える。
その代わり風流のわかったセンスが物を言うからかなりの年期と知識が要るだろう。

 つる性植物の性質を知り、どのように仕立てるか?予め計算がなければ失敗する。
私の場合まだ成功したケースがなかった。OGを参考にして今後最も挑戦してみたい課題である。

 イヴリン庭の東側窓辺に仕立てられた見事なアブチロンは、庭主のセンスの良さを窺わせてくれる。(写真4参照

☆ 教材は尽きないほどある。

  「土がみえないわ!」と、同行した我が拙庭のヘッドガーデナー(♀)<因みに私(♂)は研修生>はしきりに感心する。なるほどイヴリン庭は幾種類もの草花が密集し、しかもどれもが生き生きとしている。(写真5およびBISES2004早春号65P参照

 イヴリンさんの説明によると、宿根草とその隙間に生えるこぼれ種の草花が共存共栄できるように上手に調整してやるのだそうである。これも経験で培われた技(わざ)にちがいない。

 その他にも、バラの足元は梶先生アドバイスのとおり日光を遮らない工夫(写真6参照)があったりと教材は尽きない。
(写真7) アーチに吊り下げたジョーロの一団はあやつり人形のようだ。

☆ 参考にしたい二つの着眼点。

 たまに「丸善」に行くと<JAPANESE GARDEN>を紹介した豪華な洋書を見かける。

 そんな本を書く外国のレポーターたちが、昨年「日本で一番人気のある庭」を投票で決めた。見事ナンバーワンに輝いたのは島根県にある「足立美術館」の庭であった。なぜその庭に人気があるか?その着眼点は「見る人に感動を与える」、「管理が行き届いている」の2点にあった。

 なるほど、足立は広大な敷地に至れり尽くせりの見せ場が築庭されて、いかにも豪華絢爛たる観光庭園である。

 それに対して、プライベートな庭は自分で勝手に楽しむもので、また経済力にも応分の限界があるからとても比較の対照ではないが、OGをして「見ていただく」という点から考えると、この二つのポイントは個人の庭にも当てはまるのではないか?と思っていた。

 やはりこの日イヴリンさんのOGに訪れて、ヘッドガーデナー共々大いに感動して、共通していることを改めて実感したのである。


(写真8) 木製のベンチはイングリッシュ庭ではおなじみ。ヒドコート・マナー庭の青色に近い??



 イヴリンさんは、今年もYB岡山の有志の方々と英国の庭巡りをされるご予定だ。

 英国には「女王陛下ご推奨」のほどよく熟成した味わい深いウイスキーがある。来年のイヴリン庭はこのスコッチウイスキーのようにさらに熟成し、さらに味わいを増すことであろう。いまから楽しみである。

<Cowbell>





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憧れのオープンガーデン(その1) (その2) (その3) (その4) (その5)
第1話 出雲路の旅 第2話 土佐浜街道 第3話 デジカメ探訪 

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