PERFECT GUIDE

RHSJ会報誌の掲載内容

特集:夏越しは関西のガーデナーに聞け!

特別対談 本に頼らず、経験から夏越し対策を導きだす

 M氏,Y氏の男性コンビの園芸談義が、なんと「英国王立園芸協会(RHSJ)」の会報誌8月号に掲載されました。お2人の協力を得て、ホームページでもその全てを余すところなく公開します。

 なお、RHSJ会報誌の掲載内容は、「パーフェクトガイド」巻末の編集者特別対談の本編とも言えるもので、岡山での宿根草の夏越し策やこの夏オススメの植物などについて2人はまたまた熱く語り合っています。

「RHSJ会報誌」掲載記念・・・大クイズ大会
   やっと正解者が出ました。正解を発表します。
正解者が出ましたので、応募は打ち切り。
 
【問題】文章中には、ある共通のジャンルに関連するキーワードが9つ隠されています。ぜひ、探してみて下さい。

【回答】JAZZのスタンダード・ナンバーが隠れてる。
   1.身も心も=BODY AND SOUL
   2.サマータイム
   3.夜も昼も=NIGHT AND DAY
   4.マイ フェイバリット シングス=私のお気に入り
   5.枯葉
   6.降っても晴れても=COME RAIN OR COME SHINE
   7.スターダスト
   8.星に願いを
   9.天使のようなまなざし=天使の瞳

こんな難しい問題をよく正解できるよな。どんな人が正解したって?・・・・ジャズとガーデニングが大好きなTANABEさん、おめでとうございます。


『岡山版イエローブック』編集委員 プロフィール

M氏

好きな植物:イキシア・ビリディフローラ/好きな園芸家:牧野富太郎博士/
ただ今、『A-Z Encyclopedia of Garden plants』暗記中。

Y氏

好きな植物:アストランティア・マヨール/好きな園芸家:デレク・ジャーマン/
好きな言葉:「今播かねば誰が播く、わしが播かねば誰が播く」
 全国のオーブンガーデンブームに先駆けて発刊された「岡山版イエローブック」。その付録として今年初めて作られた「パーフェクトガイド」には、おすすめのナーセリーや園芸イベントなど地方色豊かな情報が満載で地元園芸愛好家の間でも評判となりました。
 今回は「パーフェクトガイド」編集員のお2人に、関西以西、特に岡山における宿根草の夏越し策や夏に開花するオススメ植物などについて語り合っていただきました。

 なんといっても土作り!

Y:夏といえば海。私、園芸を始める前はこの季節が一番好きだったんですよ。いつも全身真っ黒で。でも、身も心も植物を愛するようになった今では一番嫌いな季節になってしまいました。変わらないのは顔と腕の日焼けだけ。

M:私も夏は嫌いですよ。夏場に枯らした植物の数といったら計り知れませんからね。で、結局、枯れる原因は何かといえば、 “根腐れ”、“水枯れ”、“株元のダメージ”の3つに集約されると思います。この問題をいくらかでも解決できれば、うまく夏越しさせる方法が見つかるんじゃないかと思うんですけど。どうでしょう?

Y:はい。枯らした数じゃあ私も負けませんよ。今度枯れ自慢大会でもやりますか。冗談はさておき、夏越しとかいう前に、ぜひとも言っておきたいのは、園芸は土作りに始まり土作りに終わるということです。一番大事なのは土です。これしかない。これファイナルアンサーです! 夏だろうが冬だろうが、雨が降ろうが晴れようが、土作りをないがしろにして園芸は成り立ちません。夏越しのためには初夏、厳密には梅雨に入る前にしっかり根を張らした植物に作り上げておかないといけません。そのための土作りのポイントは保水性、排水性、通気性の3点です。これらの要素を押さえた土を作っておけば、 “根腐れ”と“水枯れ”の問題も同時に解決できるのではないでしょうか。

M:そそっそうですか。で、具体的に土の配合をどうするかですけど、夏越し用いわゆるサマータイムブレンドなんてものがあるの?

Y:一般に使用しているものと大差ないんですけど、まず、岡山ではベースが保水力が弱いマサ土なので、赤玉土を混ぜます。さらに、土壌改良剤としてバーク堆肥、ピートモス(できればよりきめの細かいブラックピート)、パーライト※(真珠岩が原料の粒が大きくつぶれにくいものが良い)、保水剤(サチュライド)を使います。あとは、有機石灰など。ピートは根張りを促し保水性も高めます、パーライトには排水・通気性を良くする効果があります。それをブレンドするだけのことなんですけど。

M:あのー、それってもしかして、君が普段裏庭で作っている土のこと?

Y:いやーバレましたか。サマータイムブレンドというと何か信憑性はあるんですけど、実際夏だけのために作れませんよ。つまり普段からしっかり土は作っておけばいいということです。尚、今回は紙面の都合上、配合比や混ぜ方は割愛させていただきます。いやー実はこれに秘密があったんですけどねー。

M:私も土に関しては同感です。夏向けには、通気性を良くするためにパーライトの量を増やす程度のことはしてもいいと思う。安心してたっぷり水遣りができますからね。それと一言、一般販売されているブレンド土など内容物のわからない土をそのまま使用することだけは控えたほうがいい。

 グラウンドカバープランツでマルチング

エリンジューム・バリフォリーム
葉に大理石模様があり、白い苞をもった
灰青色の花が咲く。草姿も彫刻的で美しい。
Y:ひと通り土作りができたら、高温多湿に弱い植物でも植え場所を変えて何回かチャレンジしてみるのもいいですね。同じ庭でも日照、風通し、気温などずいぶん条件は違います。ひょっとして植物にあった場所があるかも知れない。近所のおば様、いやお姉様にエリンジューム・バリフォリームを見事に咲かせている人がいます。同じ苗を同時に植えたのに、私はだめでしたからショックで夜も昼も悩み続けました。でも、園芸って、その人の庭で起こった事が真実であり、それが全てなんですよね。

M:でも、エリンジュームは松笠アザミを除くと岡山で夏越しさせるのは不可能に近いよね。何かオススメはありませんか?

Y:夏越しできるだけでなく、夏場に花も楽しめるものでは、オキシペタラム(白花種)、広葉マウンテンミントコーカサスジャーマンダー、それにクレマチス・インテグリフォリアなんかどうですか。これはマイ・フェイバリット・シングスいやプランツでもあります。

M:そうそう、クレマチスで思い出したけど、モンタナ種を大株に育てて見事な花を咲かせている人がいるんだけど、よく話を聞いてみると鉄道草(Erigeron canadensis)で株元をマルチングしているらしいんだ。

Y:雑草の鉄道草というのはすごい!!“根元の保護”いわゆるマルチング、これが冒頭に話した“株元のダメージ”これの解決策になりますね。

M:一般の園芸指南書等にはマルチングは、ピートモス、藁、枯葉、バークなどで行うと書いています。私もまだ駆け出しの頃は本に書かれているとおりそのまま実行していました。しかし、結果は水が根元まで届いているかどうかわからない、水遣りでベタべタになる、ダンゴ虫などの寝ぐらになるなど散々でした。そんな失敗例から私に残されたのが、下草やグランドカバー等でマルチングするという方法だったんです。(イブキジャコウソウとペニーロイヤルミントによるマルチング

Y:実は私も密かにそう思っていたんですよ。でも、本にはそんなこと書いてませんよ。

M:何でもかんでも本に頼るな! と言いたいですね。広い日本列島それぞれの条件の中で園芸を楽しんでいるのに、ひとつの答えをあてはめること自体おかしいですよ。園芸家はひとつの答えを出すまでの過程を楽しんでいるのであって、その答えを見つけ出した時の喜びが園芸の醍醐味と言えるんじゃあないですか! !

Y:うーん、熱いですね。さすが降っても晴れても庭に佇んでいる園芸家の言葉ですね。でもそれって園芸の本質のような気がします。で、何の話でしだっけ。

M:あ、そうそうマルチングなんですけど、ちなみに私の庭の実例を挙げるとすれば、クリーピングタイム、コルシカミント、タツナミ草、グレコマ(スターダスト)とか。要するに水が浸透しやすい適当なスキマがあれば何でもOKということです。

Y:あと大事なのは、植付けは株元をきつく押さえたりせずソフトにするとか、水遣りは朝早いうちに株元に行うとかですかね。

M:でも、最後に最も重要なことは、天使のようなまなざしでいつも見守ってやること。しかし、それでも枯れそうになった時、あとは神だのみしかありません。星に願いでもかけてみますか?

※岡山では、グリーンサム・グレイン(宇部興産)が入手しやすい。
※鉄道草(Erigeron canadensis)=ヒメムカシヨモギ

夏場にも楽しめる花

オキシペタラム

夏におすすめのオキシペタラム(Oxypetalum)。青花は一般的だが、白花は珍しい。耐寒性弱いが岡山では露地で越冬する。
広葉マウンテンミント

苞、葉ともにシルバーグレイとなり非常に美しい。観賞期間も11月頃までと長い。岡山では「キリマンジャロの雪」とも呼ばれている。
コーカサスジャーマンダー

暑さに強い、コーカサス・ジャーマンダー(Teucrium hircanicum) 珍しいルビー色の穂状の花を次から次へと咲かせ、大株になる。
クレマチス・インテグリフォリア

クレマチス・インテグリフォリア(Clematis integrifolia)立ち性で草丈50cm前後とボーダーでも利用できるスグレモノ。花色も白、青、ピンクがある。
クレマチス・モンタナ‘エリザベス’株元の鉄道草

クレマチス・モンタナ‘エリザベス’(Clematis montana ‘Elizabeth’)の株元に鉄道草(Erigeron canadensis)を生やしマルチングしている例。
パープルセージの株元

下草によるマルチングで暑さから株元を守る。パープルセージ(Salvia officinalis purpurascens)の株元をイブキジャコウソウ(Thymus quinquecostatus)とペニーロイヤルミント(Mentha pulegium)でマルチングした例。
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