カウベル母娘の「庭めぐり旅日記」

第3話 デジカメ探訪!異国情緒のある風景。

(その1、長崎グラバー邸界隈)

☆ まえがき

懐かしさに再会?「オランダ坂」の石畳。

  多ぜいのツアー客を乗せた国際便が、今日も轟音を響かせて滑走路を離陸する。不景気とはいいながら、日本もまだまだ捨てたもんじゃない、いい時代がつづいている。格安海外ツアー募集のオンパレード、こんないい時って今の内か!?と焦るけど。

 事情はそうなんだが、諸事情があって勤務先に忠誠を誓い、取りたい休暇をぐっとこらえている、けなげな働蜂のおとうさんがいたりする。
おまけに、そんなおとうさんには、日本の国から一歩も外に出たこともない、ひとりでは、西も東も分からない、行きたくても何処にも行けない、超方向音痴のカミさんがいたりする。いや、身近の話で。

 おや?ひょっとして、そんなお仲間だったりする??ご同輩のあなたも! 
だったらあなた、せめて国内の何処かちょっぴりエキゾチックな街角や庭園に行って見ませんか。それで洒落たカフェの片隅で、外国映画かなんかのおしゃべりしながら、すこし苦味が効いて香りのいい、珈琲でもちょっと一杯どうですか? 羽根伸ばして楽しんでる若者の気分になって!! ん?いまでも十分若いし羽根伸ばしてる?!\(^o^)/♪♪

☆ おとうさんのデジカメ。(+_+)!!


  或る川柳コンテストの入選句に「デジカメの エサはなんだと 孫に聞く」なんて句を見つけて笑ってしまった。
そこまではおとうさんの頭も、遅れていないと安心したものの、笑いごとではないことに気がついた。このカメのやつ、なかなか飼育するのがやっかいな代物ときた。餌をすぐに食ってしまう。手なづけるのに苦労したよ。まったく。

 今どきって、便利さと不可解さが混在していて、おとうさんたちの輩は、もう孤立無援の状態にオロオロすることが多くなってきた。そこでもう一句あった。
「初メール 返事がきたよ ウイルスで!?」 あのなァ。もし!もし!\(◎o◎)/??? 

☆ エキゾチックな風景に「坂道」が多々登場するわけ?

グラバー邸から長崎港を望む。「慕情」の舞台となった当時の「香港」を想わせる。

 
昨年の11月中旬、おとうさんは所用があってひとりで長崎を訪れた。出張鞄と、やっと手なずけたくだんの「カメ」君をお伴に連れて。

 ところで、この街は、或る晴れた日だろうが、今日も雨だったりしても、絵になるね。というよりそんな先入観でみてしまう。オランダ坂の石畳なんて、ガキの頃から唄の文句で知っているから、懐かしさと再会したような錯覚さえする。その坂道を登ってゆくとかっての外人居留地区に出る。長崎の東山手に位置し、西洋人が住んでいたところだ。

 そういえば、岡山の東山あたりの高台にスウェーデン人の邸があって、そこへつづく坂道をスウェーデン坂と呼んでいた。神戸、塩屋の見晴らしのいい高台にも、ジェームス山という呼称が残っている。
 背の高い西洋人は、どうやら見晴らしのいい、山の手の高台がお好みだったようだ。

☆ グラバー邸から見おろす風景。それはどこかで観たような!?

  南山手の一段と小高い場所にグラバー邸がある。ここに住んでいた、英国の貿易商トーマスグラバーは謎の多い人物である。
明治維新の倒幕志士たちと関わり、近代兵器の手助けをしたり、ドック建設や炭坑事業に近代設備の支援をした人物だが、日本人妻ツルとのラブロマンスは歌劇「マダムバタフライ(※)」のモデルとして有名だ。

 このオペラは米国人の小説をイタリア人が劇に仕上げ、その後、プッチーニが歌劇として発表、劇の中では、お蝶夫人とアメリカ海軍士官ピンカートンとの国際愛の破綻がテーマになっている。
 この有名な歌劇で蝶々夫人の出てくる舞台はこの邸でありこの場所なんだが、1955年に、八千草薫が蝶々さんを演じ、日伊合作のオペラ映画となっている。

 ところが、おとうさんの関心は、その映画ではなくて、同じ年に、この歌劇をモデルにして制作されたと思われる、別の映画「慕情」だった。そしておとうさんが「どこかで観たような」この風景、実は「慕情」の中に映し出された当時の「香港」だったんだよね!!


☆ 「慕情」から47年を経て。

グラバー庭園の一角。映画に登場する丘の上の木立を彷彿とさせる。


 ヤングのみなさんには、何のことだかさっぱり分からない話だ。そりゃあそうだよ。あんたの親たちが生まれた頃の話だから。

 その頃、おとうさんたちは青春真っ只中、「恋とはなんぞや?」と悩んだりした。そのQ&Aにひとつの回答をくれた、主題歌「Love is a many splendored(壮麗な、華麗な)thing」に聞き惚れてジ〜ンときたりしていた。いい時代だった。スリーサーンズとかいったな、あの旋律の美しいコーラス♪!

 分からんよね? ヤングの諸君、ウオークマンからこぼれてくるあのジャカ!ジャカ!の戦慄の音、あれもいいね。おとうさんにだって分かる。でも、音が外にはみ出してる音量で毎日やってると、おとうさんの歳になったときは、鼓膜痛めて補聴器のお世話になると思うよ。

 それでもあの頃の映画、やや現実離れした美意識を強調したシナリオで、スターといわれるビジュアル系の役者が演じていた。だからこの上なく美しくも悲しげな作品に仕立てられた。そこいらにいくらでもころがってる話を、何処にでもいるような顔した、役者がやってる今どきのドラマとは違っていた。それはそれでいいのだけど、半世紀も経つと時代は変わるもんだ。

 
☆ 名場面「港の見える丘の上」
グラバー邸内にもあった、コンサーバトリー。(ヘルプ1)

 インターネットを覗いてる年齢層ってかなり幅がひろがってきた。
おとうさんのご同輩もどんどん教室に通っている。それで目の衰えを益々悪くしてる。ま、いいか、この輩は生まれつき貪欲だから。

 「慕情」なんて、忘れかけてる名画のごきげんなサイト(※)を見つけたよ。しかも、主題歌も聴かせる。混血の女医「ハン・スーイン」のほんとに恋してるようなあの表情、男として、一度でいいからこんな女と恋してみたくなるような役柄、今どきの役者に演じることできるかな?? やっぱり、ちょっと疑問だよね。

 そこでご注目は、名場面、丘の上にあるあの木立だ。グラバー庭園の木立と似ていると思いませんか? 実はあの丘は「香港」ではなかったそうだ。
 今の香港、鉛筆立てたようなビルがニョキニョキして情緒なんてあったもんじゃない。港を見下ろす高台のビクトリアピークなんて、そりゃあもう空港並みの混雑だったりする。

 まあ、あなた、ここなんかは本場より、もっと本場らしい風景が残っているな、と思ってしまいます。

            (つづく)


※ 歌劇「蝶々夫人」
http://orchestra.musicinfo.co.jp/~kcpo/info/butterfly/butt-base.html

※ 映画「慕情」
http://www.ismusic.ne.jp/hmika/Bozyo.htm

(ヘルプ1)
コンサーバトリーは、17〜18世紀、英国の貴族の間で生まれた、サンルーム式の建築様式。植物保存の温室を兼ねている。

グラバー庭園の一角。 南山手界隈の情景。




(その1)長崎グラバー邸界隈 (その2)イングリッシュガーデンハウス (その3)大阪、恋物語の街角

(その4)幻の王宮庭園 (その5)牛窓、シチリアの海

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 第1話 出雲路の旅 第2話 土佐浜街道 第3話 デジカメ探訪 第4話 食いしん坊


こりゃまた、楽しい 第3話になりそうですね。
内輪で受けそうなオヤジギャグもふんだんに(^_^;)
画像綺麗!抱腹絶倒!空前絶後!
“違いが分かる同年輩”モグラも期待してますよぉ〜

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