カウベル母娘の「庭めぐり旅日記」

第3話 デジカメ探訪!異国情緒のある風景。

(その4 幻の王宮庭園。)


☆ 2003新年事始め。

 岡山の年明けは、穏やかな日和の中で迎えることができました。

テーマパークにはハウステンボス(森の家)を象徴する景観が随所にある。



 今年の事始めは常日頃、氏子としてお世話になっている「YB岡山HP」の表紙を飾る「初日の出」画像にまず拝礼するm(__)m!と同時に、画面にむかって、PCの守り本尊「モグラ大明神」にうやうやしく、「ぱ〜ん!ぱ〜ん!」と拍手をうち、無病息災の祈願をいたしました。なんやらこれでうちのPCも今年はやっかいなウイルスに侵されること無く、無事安泰の一年間のような気がするから不思議です。

 ある時何かの写真で、超高性能な大型コンピュータ機器がずらりと設置された大学の研究室の片隅に、神棚がそっと祭られ、機器にも御守りがペタリと貼られていたのを見たことがある。
 いくらIT革命の世の中だといっても、神通力を超越するような偉大でオールマイティーな能力は、まだ人間の世界では当分は無理だわな。(^_^;)と、このときからおとうさんは科学の力より断然偉大なる「神々」を信じようと決意を固め、「モグラ大明神」を崇拝するようになったんです。


☆ あさましいおとうさんの信仰心?!

運河の向こうに見えるのはアムステルダム中央駅をモデルにしたホテル日航。

  その偉大なる「神々」への信仰心が深まると、常時「神々」の御傍に侍りたいと思うようになる。そうしないと不安になるからだ。そこまでは神聖で汚れのない考え方であるが、そのうちに時として、恐れ多くも「神々」と同じ食事を口にして、少しでもその神通力にあやかろうと、あさましい人間どもは考えるようになる。
あげくに、神棚に供饌のお餅を下げて煮て食うなんて行動を起こしてしまう。

 とにかく正月元旦は目出度い。目出度い祝い膳として「神々」の食事をうやうやしく頂く、羹(あつもの)の雑煮文化が全国的に発達した。と、食い意地のはったあさましいおとうさんは考えてしまうのです。

 正月三が日の朝、我が家では「山の神」によって定番の雑煮が用意される。
先ず元旦には、塩ぶりのすまし汁仕立ての雑煮であり、二日はあずきを煮た甘いぜんざい、三日目はサイコロ状の大根や黄ニラをあしらった白味噌仕立てのものである。

 わが家代々の「山の神」によって伝承のこの雑煮スタイルは、おとうさんがガキの頃からつづいているので、これがどこの家庭でもおなじスタイルなのかと思っていたらカミさんに笑われてしまった。

 どうやらこのスタイルには微妙にちがう地域差があって、すまし汁仕立ては岡山以西の山陽、九州地方で、味噌汁仕立ては京阪から岡山あたりまでだそうで、丁度我家の位置がその分岐点に当るらしく両方のスタイルを取り入れているという。なんやら眉唾の話のようだが、昨今信仰心が旺盛になったおとうさんは「山の神」の話を信じて疑わないのです。

 因みに、甘いぜんざいは鳥取地方のスタイルで、県境に近い岡山県北出身の先代の好みであったのか?これも定かではない。

☆ わが家の初詣は神聖な「百間川」の川辺にある社。

オランダ人が感嘆するそっくりの街並み。


  「百間川」といえば、野生の珍しい川魚が生息していて自然の残る美しい河川であるが、偉大なる「神々」によってガードされた神聖な人工の放水路でもある。
 川辺にある長利はPCの生き神様「モグラ大明神」の庵があって、信心するほどに心温まる御利やくがあるから、今では熱心な信者が増えて全国的に知名度が高くなった。

 この長利から百間川をやや下ったところに全国的にはあまり知名度のない「沖田神社」がある。
我家の初詣はこの「沖田神社」から、さらに百間川河口に近い「横樋観音」へのお参りがここ数年来の慣例となっている。

ところでこの「沖田神社」の境内に、「津田永忠」の座した銅像があるのを皆さんはご存知だろうか?
「津田永忠」といえば昨秋、あの八塔寺でプロジェクトYsのみなさまが、「風水ガーデン」を作庭して捧げた人物として記憶にあたらしい。

☆ 龍神の怒りを鎮めた「沖田姫」の伝説。

前庭があるパレス・ハウステンボス。


  岡山のご城下を洪水から守るために築造された「百間川」は「津田永忠」の考えによるものだ。
 この他にも彼の残した偉業は岡山のスペシャルガーデン「後楽園」の造園、わが家のある「沖新田」の造成、櫂の木で有名な「閑谷学校」の拡張、など枚挙にいとまがない。

 そのなかで「沖新田」の造成にまつわる不思議な伝説をご紹介しよう。
沖新田はその名から分かるように、百間川をはさんで西の旭川と東の吉井川の間に堤防を築き児島湾の一部を潮止めた干拓である。
津田永忠が総指揮をとる大工事は順調に進み、最後の潮止めを残すだけになっていたが、この潮止め箇所が崩れるばかりでいっこうに止まらない。

「竜神さまのたたりじゃ。人柱をたててお怒りを鎮めにゃおえんぞな!」
 多数の人夫の声に困惑する永忠を見かねた、屋敷の若い上女中「キタ」は「わたしが人柱にたちましょう。お殿様のお役に立てば親もよろこんでくれるでしょうから」と人々の見守る中で、白装束裸足姿で海に身を投じた。
すると不思議に潮流は鎮まり工事は無事完了したという。

 この伝説には多数の異なる説があって、いったいどの話が真実なのか分からないが、「キタ」という名前は概ね共通していて、沖の方に流されて「キタ」が死んだので沖田姫となり、新田開墾に尽くした「キタ」の霊を「津田永忠」の命によって祀ってあるのが「沖田神社」であるという。
これは土地の古老の話である。

  そういえば永忠の銅像は本殿に向かって正座し、沖田姫の霊を今でも弔っているかのようにみえる。

 
☆ よく似た「オランダ」の伝説。

「幻の庭」といわれるパレスの後庭。中央の噴水は「神々」の母神ガイアの心臓を表す。


 昨年11月の中旬、おとうさんは所用があって長崎県佐世保市にある「ハウステンボス(※)」を訪れた。

 レンガ造りの瀟洒なホテルヨーロッパで仕事仲間との会合を済ませたおとうさんは、仲間の案内で、あるテーマ館に入った。
 その館はオランダに伝わる古老の話を、ワイドスクリーンを使った映写と、実際に大量の水を使った噴水装置や座席の振動装置、迫力のある音響装置を駆使して、実にリアルに、いやそれ以上オーバーに観客に実感を与える体験館だった。
 この劇場は、子供はもちろん大人にも人気があって、入り口では長い行列ができていた。


 二人の可愛いいこどもを前に、オランダの古老が語リ始めた話とはこうだ。
「水を大切にしなさい。水を粗末に扱うと海の神が怒って人間どもに襲ってくるぞ!!」
 静かな語り口で始まるのだが、こどもが誤って水がめの水をこぼしてしまう話の展開からクライマックスに至る過程で、こぼれた水がしだいに増えて海面が徐々にせり上がり、波が怒涛となって田舎町に押寄せるあたりでは水しぶきが飛んできて座席が揺れ動き、場内の悲鳴とともに実に迫力があった。

 海神(竜神)の怒りを恐れた先人たちの思いは、オランダも沖新田でも同じであることが古老の話から伝わってくる。
「オランダ」の正式国名「ネーデルランド」は「低い国」と言う意味であり、国土の30%は海面下だそうだ。やたら運河(用水)やダム(樋)が多いのはおとうさんの住む沖新田と同じだ。

 そんな環境で暮らしていると、自然の水による猛威が恐ろしくなってくるのがよくわかる。竜神のたたりがないよう「水をもっと大切にせにゃあおえんな。海神さまはぼっけえきょおてえ!」っておとうさんは反省するのだ。


☆ オランダ人が感嘆する「ハウステンボス」。

パレス近くに薔薇園もあった。


 ご存知「ハウステンボス」は、オランダを知らない日本人よりもオランダ人のほうが来て見て感嘆するそうだ。街並みや教会や運河のありさまは、歴史を重ねた適度な汚れや傷みがないことを除けば寸分違わないという。
 これら本場のディテールにこだわった意匠は、まったくオランダの街並みの生き写しだという。

 この超大型テーマパークの出現は、古くから日本と文化交流のあったオランダに衝撃を与え、王宮まで再現しようとしたのでオランダ王室の感興をそそることとなったに違いない。事実その再現に当っては王室から特別のはからいを受けて本国にも実現しなかった『幻の庭園』がこの地において日の目を見ることになったから、オランダ人が驚く程度がわかる。

☆ 幻の王宮庭園。

 オランダの商都、アムステルダムは、アムステル川にダム(樋)を造ったことで栄えた都市である。
ベアトリック女王陛下が住まわれる王宮はこの街の中心部にあるそうだ。

 「幻の庭園」は造園家ダニエル・マロー(1663―1752)がオランダ王宮のために設計したが実現しなかった庭で、壮大な宇宙観を見立てた設計になっていた。この造園家のドロウイングにもとづき、パレス・ハウステンボスに忠実に再現したものだそうだ。

生活の知恵から生まれた「風車」は土地の低い国を海から守った。


 説明によると、前庭、後庭がありそれらを挟んで真中に太陽を表す宮殿がある。前庭は天空の支配者ウラノスの庭。後庭は大地を意味するガイアの庭である。宮殿正面には地球を表すゲートがあって、扇状のレンガの上には月がある。そして太陽である宮殿がこれら天界に光を放つ。そして建物から放射状に赤と黄のレンガ道があり、赤は太陽の軌道、黄は光線を意味しているそうだ。

 「幻の庭」は造園にあたって西洋の宇宙観にもとづき、神話の「神々」を奉った神聖な庭園であった。
昨今、「神々」の存在を信じるようになったおとうさんは、時の経つのも忘れてしばしこの「幻の庭」に見とれていた。
やっと案内人に促されて、おとうさんはホテルの方に向かって海岸のプロムナードを歩きながらふと考えた。
晩秋にしてはおだやかな大村湾から心地いい風が吹いてくる。

 「はて?これとよく似た造園コンセプトの素晴らしい庭がどこかにあったぞ???」
やがて、ホテルにたどり着いたおとうさんは「そうか!」と思わずひざを叩いてしまった。
おとうさんがやっと思いだしたのは、あの東洋中国に伝わるFengShui(風水)的方位学にもとづき、プロジェクトYsのみなさまが「津田永忠」に捧げたあの「風水ガーデン」であった。

                           (つづく)

ハウステンボス http://www.huistenbosch.co.jp/



(その1)長崎グラバー邸界隈 (その2)イングリッシュガーデンハウス (その3)大阪、恋物語の街角

(その4)幻の王宮庭園 (その5)牛窓、シチリアの海

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PCの守り本尊に祭り上げられたモグラは有頂天!!
百間川誕生に、そんなお話があったとは知りませんでした。
カウベルさん、素晴らしいレポートをありがとう〜(モグラ)

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