第1話 ルイス・C.ティファニー庭園美術館を訪ねて出雲路の旅(その7)
▼外観にもこだわりがある「珈琲館」 |
☆ こだわりの店「珈琲館」(朝のグルメ)
全国どこの街にもこだわりの珈琲を飲ませる隠れた名店がある。
京橋川に架かる京橋のたもとにそんな名店「珈琲館(※)」がある。ホテルの朝はバイキング朝食でスタートするのが旅気分だが、それに代わってこだわりの珈琲店でモーニングと洒落るのもまたおつな気分である。
この店はこだわりのモーニングセットも人気で、土曜日とはいえ朝から常連で満席である。
堀川を窓越しに眺め、珈琲の味と香りでくつろぎの極致に達した母娘と庭師は、9時開館のティファニー庭園美術館へと出発する。旅は3日目の朝である。
☆ 自伝酒で整えるダシがそばの香りを引立てる!逸品「割子そば」を賞味する。
(昼のグルメ)
L・C.T美術館と庭園の鑑賞で3時間を過ごしたカウベル一行は、再び松江の街に戻ってきた。庭師がどうしても立寄りたい店がこのご城下にある。出雲そば専門店「神代そば(※)」である。
店自慢の打ちたてそばは、コシの強さと香りに定評があり、そば本来の味を楽しむ「割子そば」は、本ぶしをベースに出雲独特の地伝酒でダシを整えたまろやかな風味の一品だという。
ご当地七代藩主不昧公は「茶を飲みて道具求めてそばを食い、庭をつくりて月花を見ん。その外は望みなし!」と申されたとか。
そのそばを賞味せずして出雲の旅は終わらない。考えてみると今日1日の行動はこの大名気分そのものではないか。いやはや恐れ多い話である。
☆ 野辺の花のように素朴で美しい民藝の器
「神代そば」を出た3人は、娘の案内で湖岸道路を出雲市に向かっていた。
仕事の関連で娘は「食器」を扱うことがある。その関係から工業デザイナー「柳 宗理(※)」に傾倒しているという。
宗理の父、宗悦の民藝の教えに一心に帰依して、素朴で美しい器の創作にはげむ「出西窯(※)」が斐伊川の辺にある。ここで作られる陶器は、日常的な実用性とシンプルな美しさを追求したもので、決して鑑賞用ではないという。生活の道具としてこの食器を重宝にしている娘は、何点かを選んで旅土産にしていた。
太陽がやや西に傾いて時計の針は午後4時を指しかけている。
この陶窯を後にした3人の車は太陽を背に受けて、宍道から一気に高速道にのぼり、一路岡山をめざして帰途についた。車が総社あたりにさしかかった頃、空は茜色に染まり、我家にたどり着いたとき時計の針は7時を周った。
昨日、嫁が島の向こうに沈む夕日を眺めていた、丁度同じ時刻であった。
☆ あとがき
旅から帰宅したある日、オーナーと私は自宅庭のテラスで旅の写真を見ながら話がはずんでいた。田園をそよ吹く風にのって、聞こえてくる農家の耕運機の響きがのどかな昼下がりである。
「ティファニー庭園の写真が少ないわね?」とオーナー。「植栽がまだひ弱な感じだった。でもこれからが楽しみ。充分根付いてどんどん成長したとき、きっと本場英国の顔になるよ。冬場の管理も大変、植栽が寒い出雲の冬を越すためにヘッドガーデナーを英国から呼ぶという話だし、年々見ごたえのある庭に変わる。そのときを待って写真に収めたいね。」
私はあのとき、5月の陽光にまぶしい端正な顔立ちの庭園正面(※)に立ち止まった。そのときの光景を思い出していた。(第1話完)
▼格調のある装飾デザインが施された庭園正面近く。 | ▼左のイメージで改造中の自宅庭ミニ空間。はたしてどんなことになりますことやら? |
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第1話、めでたく大団円。カウベルさん、お疲れさまでした。
グルメに、民芸にと、話題豊富で、随分と楽しませて貰いました。L・C・T庭園は、3年後が楽しみな庭ですね。
新年からの第2話に(?)、今から期待集中!!良いお年をお迎え下さい。・・・(モグラ)