アイコン TANABEさん、「ガーデナーへの道」 

    その5 「魔法使いのおじさん」


この3人で工事をしてくださいました。

左から……樋口さん、トオルくん(お弟子さん)、奥様。
トオルくんの笑顔がいいでしょう?
お師匠さんの教育がいいのかしら。



 その日、我が家を尋ねてこられたのは、痩せた、白髪交じりの一見、ふつうの「おじさん」。
FUJIWARAさんからは、「えっ?この人、ほんとに大丈夫なんかしら・・・って、正直思ったくらい、フツーのおじさんなんだけど、それがすごいセンスがあるんよー。」と聞いていました。
確かに!(なんだか魔法使いのおじいさんみたい・・。)初めて会った、造園家の樋口 優さんの第一印象でした。そして、あとでわかった事ですが、本当に樋口さんは、魔法を使うように、お庭を作る人でした。

 あいさつもそこそこに、樋口さんは早速、家のまわりをあちこち見て回り始めました。
自分たちで並べたガタガタのレンガや、実家からもらってきて植えたツツジなどが、やけにかっこ悪く思えてきて、プロの前でちょっと恥ずかしい気もしました。「自分たちでは、これが限界なんですよねー。」なんて、聞かれもしないのに言い訳みたいなことを言っちゃったり。黙ってぐるぐる見て回る樋口さんは、ニコッと笑いました。

 そして、「うん!これはおもしろい物ができる!」と言ったのです。私は、こちらのなけなしの予算を小声でそっと伝えると、「大丈夫。それで、ちゃんとできますよ。」というではありませんか。ああ、神様、仏様!このひとは「できる」と言っている!うちの敷地は幸か不幸か、主人の親が大事に守ってきた田畑の一部を譲り受けたものなので、どーんと広いのです。ですから、少々の額では、ちゃんとしたお庭はできないと思っていました。

 「後日、図面と見積もり持って来ますから、ほかにも見積もりとって、ゆっくり吟味してくださいね。」わぉ!自信あるんだ、この人。でも私、もうこの人に決めました。
 なぜかと言うと、FUJIWARAさんのお庭で、作品の良さは知っていたということだけはありません。
彼は、名刺を持っていませんでした。職人さんに、営業っぽいものは要らないと思うのです。歯の浮くようなお世辞も言いませんでした。かといって、気難しいばかりの、職人きどりでもないようです。敷地を見て回るしぐさ、動きには、無駄がありませんでした。
「このひとは、自分の仕事にプライドを持っている。だから、ヘタなことはしないはず。」
金額、敷地の条件、そんなことを理由に仕事をする人ではないと思ったのです。

 業者の営業マンではなく、直接仕事をする職人さんに会えたのは、後から思えばラッキーと言えますね。
「いつまでも待ちますから、こちらこそ、いい図面をかいてくださるのを楽しみにしています。」そう私は答えました。
そして、樋口さんは家の写真を何枚か撮って帰りました。帰っていく車の後ろのバンパーが、どこかにぶつけたのか、へこんでそのままになっていました。こういうところに頓着がないのも、益々もっていい感じ。「ほんとに良さそうな職人さん・・。」見送りながら、そう思いました。
                            (つづく)

「魔法使いのおじさん」・・・そう、樋口さんって魔法使いなんですね。
次回はいよいよ図面が出来るかな?楽しみ!・・・・(モグラ)

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