英国縦断庭めぐりツアー(スコットランド〜湖水地方〜コッツウォルズ)  Vol.3

    
グリーンバンク ガーデン』
 (Greenbank Garden)


 エジンバラが政治の中心地なら、グラスゴーは経済の中心地。
 街の歴史は6世紀までさかのぼりますが、産業革命によって農業主体から工業都市に生まれ変わりました。
 グラスゴーの中心街には、19世紀後半から20世紀初めの冨を象徴した建物が建ち並びます。

 そのグラスゴーの中心地から南西へ約6マイル、クラークストン(Clarkston)まで走り、“グリーンバンクガーデン”を目指します。
 グリーンバンク・ハウスは、グラスゴーの商人、ロバート・アラソン氏(Robert Allason) によって、1794年に建てられました。


 グリーンバンク・ハウスに到着。車寄せの後方に、18エーカーに及ぶ森と牧草地が拡がります。

 森の入口で、“ハイランド牛(Highland cattle)”が出迎えてくれました。ユーモラスですが、力の強い役牛です。

↓ 「Greenbank Garden Map」
(クリックすると大きくなります)

 16の部屋を持つ、上品なジョージ王朝の建物“グリーンバンク・ハウス”。本宅の右には馬小屋があり、少し離れた左手の納屋は、現在、売店と喫茶室になっています。 

 何世紀もの間、先祖代々がこの地域で農業を営み、アメリカの植民地との取引で、富を得たそうです。
 財産を築いた後、彼は先祖の土地だったフランダース農場(Flenders Farm)を購入。2.5エーカーの壁のある庭と18エーカーの森を手に入れました。
 私たちは、ヘッド・ガーデナーの案内で、普段公開されていない邸宅の中まで見せて頂きました。豪華な調度品で彩られた広い応接間には、格調高い暖炉があり、窓の外には緑豊かな庭がひろがります。

 がぁ〜、説明を聞くうちに「何だか変!?」
(ここだけの話し・・・“煙突の数と部屋数は一緒”と聞いていたのに、そんなに部屋は多くない。玄関を入った所は豪華なのに、そこから奥へは入れないよう扉が付いている。車寄せ左手ドアや窓はペンキで描いてある?)
 当時“窓税”があり“窓”はとても高価でした。家を大きく見せる為、窓とドアは“だまし絵”だったのです。 スコットランドにも、楽しいお方が住んでおられたのですね。アメリカ独立戦争の後、当家は金融難に陥ったそうです。

 1962年には、ブライズ氏(W P Blyth)が購入。彼と奥さまの手によって、本格的な庭づくりが始まり、1976 年、NTSに寄付されました。
 “グリーンバンク ガーデン”の魅力は、レイアウトの妙でしょう。イチイやコニファーの生け垣で区切られた小部屋は、それぞれがキャラクターを持つ、12のエリアに分かれています。
 歩を進めるうち、次々に変わる庭のスタイル、花木の取り合わせ、さらに臭覚や聴覚までの五感をも楽しませてくれます。

 では 「ノット・ガーデン」から、 見せて頂くことにしましょうか。・・・この庭全体は緩やかな坂になっています。(Mapの上から下方向に、僅かながら下っていきます)
 ノットガーデンも約0.5mの高低差がありますが、それを感じさせないよう生け垣の高さを補正してあります。(写真右側の生け垣が、左より50cm高く刈り込まれています。)
 ヘッドガーデナーの丁寧な説明を聞きながら、“実験農場”にやってきました。

 種苗会社やナーセリーから苗が送られ、2年間、この地域の環境に合うかどうか?試験栽培します。
 この結果は全英に公開され、園芸家の参考資料として供されます。

 イギリス各地に同様の実験農場があり、地域情報が入手できるシステムです。
 庭には、車椅子で入れるよう、どこもバリアフリーになっています。

 ここは、昔、テニスコートだった場所です。そこに水辺とレイズドベッドを作りました。

 “黄金しもつけ”と、クレマチス“インテグリフォーリア・ブルーベル”の奥に見える花壇は、一段、高くなっているのが判るでしょうか。車椅子に乗ったままでも、花が見え易く、香りが嗅ぎやすい 高さに配慮しています。
 “四季の庭”と呼んでいるエリアです。

 チップを敷き詰めた小道と低木の“冬の庭”から、羊の置物と一本の木で区切られた“春の庭”へ。・・・鮮やかな緑の芝生が印象的です。
 夏の庭は暖色系でまとめられ、しっとりとしたグラス類の“秋の庭”へと四季の移ろいを感じさせてくれます。

 葉が縮れた珍しい“ヘーゼルナッツ”を見つけました。「病気ですか?」の質問に、「いえ、変わり葉です。葉の形が面白いから、こうして育てているんですよ。」と、あくまで自然体です。
 季節が変わるたび、完全に改変される花壇があります。夏の庭の近く“ウォールガーデン”に、移植コーナーがありました。
 「ここに植えると、みんなに負けないよう、元気に頑張るんですよ。」と言う、ヘッドガーデナーさん、植物に対する優しさが溢れています。

 四季の庭に咲く花達、“アリウム・クリストフィ”、“カンパニョラ”、“フィゲリュース”が。
 ぐるっと一周し“トピアリーガーデン”にやってきました。「おや?OWLさんがこんな所に。」

 大きなフクロウは庭の守り神、カタツムリや兎に混じって、判らない形が2つありました。

 ヘッドガーデナーにお聞きすると、イタズラっぽく笑って「こっちは、ミレニアム(2000年)騒動の“コンピュータバグ(虫)”。そしてこの丸い形は“蜂蜜の壺”ですよ」・・・庭づくりを楽しんでいるな!と感心しきりでした。
暑中お見舞い申し上げます・・・モグラから“涼しげな水の音”をお届けします。


 見所はもっともっとあるのですが、12の庭すべてをご紹介するには、スペースが足りません。ゴメンナサイ。m(_ _)m

 散歩していると、どこからともなく、涼しげな水の音が聞えてきました。
 その音は、イチイの生け垣で目隠しされた奥から聞こえるのです。音を頼りに、小さな入口を入ると、目の前に大きな泉が現れ、“水の精”が水を浴びていました。

Greenbank Garden
Flenders Road, Clarkston, Glasgow G76 8RB.
Tel (0141) 616 5126.

訪問日:2004/07/04(sun) 天気:晴れ時々曇り
HP:http://www.nts.org.uk/

1時間以上に渡って、ヘッドガーデナーさん(スミマセン、名前を忘れました)に、ご説明頂きました。
懇切丁寧、庭づくりの楽しみとご苦労が判り、ホント、為になりました。ありがとうございました。・・・(モグラ)


  訪問日程表  (1)ハモンドさん  (2)ブランクリン  (3)グリーンバンク  (4)ゲイルストン  (5)インバレスクロッジ
(6)マレニー  (7)ビーチグローブ  (8)ウーラートン前編  後編  (9)デビッドオースチン  (10)ルガース
(11)ウィズリー  特別寄稿“旅の半ばで”  “湖水地方の思い出”  
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