Open Garden

カウベル母娘の挑戦

憧れのオープンガーデン。(その3)


 とうとうその日がやって来た。1週間ほど前、いきなりのオープン宣言で、果たして来てくださるお客さまがいらっしゃるのか?
オープン時刻になるまでの間、期待と不安が交錯した実に妙な気持ちだった。
 朝早く目がさめて「午前中は大丈夫みたいね!」と、カミさんは空を見上げている。雨の予報に反して空は明るい。
どうやら今日は半日の勝負、そう思ったおとうさんは庭の最終チェックにとりかかった。

 正午をすぎて午後1時頃からポツリと雨が落ちてきた。
2時まえに最後のお客さまが帰られてから雨は本格的に降りだした。客足はここで途絶えた。

 嬉しいことに、予想以上のお客さまが入れ替わり立ち代って来庭くださった。もちろん、YB岡山庭番モグラさんご夫妻をはじめ、親しくしていただいているYBメンバーの方々の応援訪問を頂いたからこそ、初めての「オープンガーデン」でありながら、ぎこちなさがとれて、楽しいひとときになった。
 心配していた狭い駐車スペースは、ちょうど適当な間隔と、乗り合わせてお越しくださったお陰で、スムースにことが運べた。
まず何はさておき、こんな片田舎で、これといった取柄のない自宅庭に足を運んでくださった皆様方には、感謝で一杯の気持ちをお伝えしたいのです。

 あわただしく過ぎ去った4時間余、なにがおこったのか?いちいち記憶に留める余裕もなく、あっ、という間の出来事のように思えた。
そのいくつかの記憶をたどってみることにしよう。


☆ N夫妻との約束。

人目をひきつけた「エキウムファスツォスム」の花。無敵のガーデナーあのYさんも初めて見たと言われた

 オープンの時刻10時丁度に、船穂町からN夫妻がお見えになった。
N氏はおとうさんの仕事仲間で、夫人は花庭づくりのベテランである。
とりわけ、ハーブ類の蒐集とその生育に力を注がれていて、珍しい品種を集めたすばらしい庭をお持ちである。地元の玉島テレビでも紹介されたほどで、昨年の春、カミさんと一緒にその庭を訪れた時には、豊富なハーブの種類に圧倒されたものだ。

 その折、N夫人は珍品種「エキウムファスツォスム」という花鉢をくださった。今まで見たこともない紫色をした珍しい形状の見事な花で、栃木県の日光でその苗を手に入れられたそうだ。
カミさんはその花枝を切って挿し木にしていたものが、今年大きな花をつけた。

 「あら、見事に咲いてる!」N夫人も庭に入るなりその花を見て驚かれた。
多年草だが花木が成長するにしたがって花は小さくなり、挿し木で咲いた1年目の花が一番大きくて立派なようだ。
自宅庭は、N夫妻にとって興味をひくめずらしい植栽はないが、夫婦でガーデニングをエンジョイしている、我が家流の暮し方がわかる屋外空間に、N夫人は興味を持たれたようにお見受けした。

 「年に一度お互いの庭で会いましょう!必ず。」この日、嬉しい「庭交流」の約束が交わされた。また来年が今から楽しみである。

☆ この庭のオーナーって誰!?

 あるお客さまから、「この庭のデザインやコーディネートをされるのはご主人ですか?」と、たずねられておおいに赤面した。つまり、この庭のオーナーはカミさんではないのか?という意味のご質問である。しばし返答に窮してしまった。そんな、デザインというほどの代物でもないし、ましてやコーディネートするなんてレベルの庭でもない。

 最近、その種の情報雑誌を見ると、英国や日本の個人庭のオーナーはほとんど女性である。因みにYB岡山へ登録されたオーナー方もそうである。
おそらく、ガーデニングという、几帳面で絵心の要る女性向きの趣味に、おとうさんが登場したので、不思議に思われたのだろう。

 「はい、自宅庭は東と西に分割されていて、一方がカミさん、もう一方が私です。そうすることでトラブルがなくなりました\(^o^)/!」と、とんちんかんな説明をして笑われてしまった。(~_~;)
現地を何度も訪れた「英国通」モグラさんのレポートによると、花が中心の庭園にはセンスのいい女性のオーナーがいて、毎年デザインを一部変えたり、色彩や、植栽のスタイルを前年とは違う趣にコーディネートして、花庭づくりを楽しんでいる様子がうかがえる。

 そんなオーナーさんとは雲泥の差であるが、自宅庭も花庭のオーナーはカミさんである。細々とした花のお世話は、とてもおとうさんの手には負えない。おとうさんの役割は?といえば、オーナーの指図にしたがって穴を掘ったり、重たいものを運搬したり、もっぱら頭をつかわなくて済む力仕事なんです。(^^♪!しかし歳取ると腰にくるから疲れるけどね。(^_^;)
庭先に掲げたカウベルと雌牛のエンブレム。


☆ 「カウベル」というネーミング。


 我が家には、先代がスイス旅行から持ち帰った「カウベル」があった。
アルプスに放牧された雌牛が首にかけていた大きな鈴状のものである。
その鈴を振るとまことにユニークな音色がでる。

 のどかで美しいヨーロッパの田舎を連想させるこの響きが、おとうさんはたまらなく好きだ。
 天気のよい休日の庭で、このカウベルを鳴らして合図をすると、雌牛の母娘や、子牛どもが集まってきてにぎやかなティータイムが始まる。

 あなたもご自分の庭に、素的な「愛称」を考えられたらいかがでしょう。
ガーデニングがいっそう楽しくなりますよ!
 庭先に掲げた雌牛のエンブレムが、お客さまの目にとまってこんな説明をしてさしあげた。

☆ 好評だった、手作りケーキと摘みたての苺。

 カミさんが一番心配していたことが事なきを得た。
おとうさんはほっと胸をなでおろすことが出来て嬉しい。(^_^;)

 自宅庭は広い割に花々が少なくて、オープンには時期尚早という思いがカミさんの頭から離れなかった。
ところが、ナイス!リカバリーショットが出た!バンカーで大目玉のゴルフボールが次の1打でピンそば30センチについたようなものだ。
 「花より団子」っていうことわざもある。

 英国の庭主ジル・コウレイさんが言われたとおり、「お客さまのために、美味しい紅茶を選び、ケーキを手作りします」を、その通りにカウベル母娘は実践した。

 前夜、ケーキ作りが得意の娘によって、我家のキッチンはケーキ工房と化した。カミさんはマスカットがブレンドされた紅茶を、家中のティーポットを集めてアイスティーに仕込んでいた。部屋中に紅茶の香りが漂い、さながらカフェの厨房になった。

 当日の朝、庭の2ヶ所のテーブルにちょっとおしゃれなクロスを敷き、ケーキ皿、フォーク、グラスを並べ、真中の二枚重ねのケーキスタンドに、5種類の手作りケーキと畑から摘んできたばかりの、真っ赤に熟れた苺を盛った。
このセッティングは、庭の花々よりももっと華やいだ彩と雰囲気を醸し出した。

 「まあ!どうして、ここの苺はこんなに甘いのよぅ〜!!」
(さすが、違いがわかるえつこ姫さま!ありがとうございますm(__)m!)
その一言で、しり込みしていたカミさんに俄然勇気が湧いてきた。
もう、カミさんは得意になって、庭よりも苺畑へとお客さま方を誘導したりしていた。
それからというもの、話題は庭や花よりも、もっぱら「苺とケーキ」に集中してその場は盛り上がったのだったが....。

 ん!? こんなのオープンガーデンとは言えないって?? ドキッ!!
それでは次回にご期待を。
庭好き花好きのお客さまは、初対面とは思えぬ親近感だ。 まごころを込めた「美味しい紅茶と手作りケーキ」はお客さまに喜んでいただけた。
(つづく)

庭にはオーナーの人柄や生き方が現れる。・・カウベルさんのお庭は、入った瞬間から優しい雰囲気が伝わってきます。
それに美味しい手作りケーキとお茶・・・こりゃ、初めてのオープンで「ホールインワン」ですぞ。(モグラ)

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憧れのオープンガーデン(その1) (その2) (その3) (その4)
第1話 出雲路の旅 第2話 土佐浜街道 第3話 デジカメ探訪 

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