憧れのイングリッシュガーデンとモネの庭をたずねて  Vol.6
    チャーチル元首相が産まれた 
ブレナムパレス』
 (Blenheim Palace)



 オックスフォードの北西13Km、車で30分ほど走った“ウッドストック”という町にブレナム宮殿があります。
 ウッドストックはコッツウォルズ独特の美しい石造りの建物が並ぶ町で、なだらかな丘には牛や羊の放牧地が広がります。古く12世紀初頭には、王室の狩猟の地となり、その宿泊の拠点として“ウッドストック・マナー”がつくられました。

 マナーの近くにある“ブレナムパレス”庭園だけでその広さは2,100エーカー!!(約250万坪)もあります。・・・といってもピンと来ませんが、成田国際空港の約6倍ほど。
 その周辺もずぅ〜〜っと、モールバラ公爵の所有地で、走れど走れど敷地を囲む塀が続きます。

 1874年11月30日、チャーチル元英国首相が産まれたのがここブレナムパレス。活発な母親は臨月までパーティに興じていたところ陣痛がおきて大慌て。ホール隣の衣装部屋で、チャーチルを出産しました。彼が産まれた部屋や、小さいけれども瀟洒なベビーベット、彼が父親に送った手紙なども館内で公開されています。
 ブレナムパレスは世界遺産に指定されていますが、現在も第11代モールバラ公爵の住居になっています。

↓ 「GardenMap」(クリックすると大きくなります)

 ブレナムの由来は、オランダのブリントハイム(BlindheimまたはBlenheim)の戦いと言われています。

 この土地がジョン・チャーチル(初代デューク・オブ・モールバラ) に与えられたのは1704年、この戦いでフランス軍を退けた功績を讃えられての事です。
 アン女王(1702年戴冠)から、“王家の領地と、24万ポンドを与えられた”と東門の碑文に書かれていました。

 入口を入ると長い長い直線通路を歩きます。左手に“イーストコート”と呼ぶ、使用人の回廊が連なり、大きな時計台の下をくぐります。

 ←この時計台が“ブレナムパレス”か?
と思いきや、これは“イースト・ゲート(東門)”

 時計台の下のアーチをくぐると“グレートコート”にたどり着きます。↓
 宮殿内はすばらしい絵画や調度品など芸術品ばかり。何しろ建物全体が“世界遺産”ですので、写真撮影はできません。
 見どころはウォーターガーデンから見える“大図書館”。55mもの長い部屋には1万冊の蔵書をはじめ、公爵家の肖像画、公爵家の写真、ダイアナ妃(妃のスペンサー伯爵家とは親戚筋にあたる)の写真も飾ってあります。

 玄関を守る大砲の脇を通って正門へ、大きな門を守る鍵の仕組みも見せて頂きました。→
 ブレナムパレスは1705年、建築家ジョン・ヴァンバラ卿によって建てられ、続いて、彼の最高傑作“石の大橋(幅30m、高さ8m)”が建築されました。

 また周辺の庭は、有名な造園家“ヘンリー・ワイズ”が担当しました。
 230mのツゲで作った花壇など、フォーマルガーデン(整形式庭園)が作られたようです。
 ところが18世紀に入り“ランドスケープガーデン(風景式庭園)”の流行と共に、時代の寵児と言われ、いくつもの庭園を改良した“ケィパビリティ・ブラウン”。彼が庭を大改造します。
 彼はこれまでのフォーマルガーデンをことごとく取り壊しました。自然の風景を至上とし、川をせき止め人工湖を作り、彫像を壊し、芝生や樹木を植え付け、今までの庭を一変させました。

 大橋の遙か向こうに40mの高さでそびえるモールバラ公の記念碑(The Column of Victory)だけは残されたようです。
 そして3度目の改造は“9代目モールバラ公”の時代、20世紀初頭のことでした。

 ネオクラシックとも言うべき“イタリア庭園”や左の“ウォーターガーデン”が作られ、芝生に変わって敷石が登場します。

 見事なツゲのフォーマルガーデンや彫像も再登場しました。
 さまざまな時代に翻弄されたブレナムパレスの庭ですが、館を離れ森にはいると、穏やかで安らぎを感じる小径が続きます。

 少し離れたところにはガーデン・センター、キッチン・ガーデン、モールバラ迷路などもあり、小さな鉄道で子供達が遊んでいます。(地図、左上)

 また、湖のように広い女王の池ではクルーズやボート遊びもできます。(地図、下部)
森の小径を15分ほど歩くと“ローズガーデン”が見えてきます。

 周囲をアーチ型の柵に囲まれ、一歩足を踏み入れた途端に、バラの香りが漂ってきます。

 円形の花壇を幾つかのコーナーに区切り、赤、ピンク、白のバラを対称的にディスプレイしています。花の美の楽しい演出です。

Blenheim Palace
Woodstock,Oxfordshire,OX1 4AX, UK
the Administration Office on 01993 811091
訪問日:2002.6.19(wed) 天気:晴れ、気温:21℃
HP:http://www.blenheimpalace.com/

 
18世紀初頭から庭づくりをしており、時代の流れの中での変遷がうかがえます。
フォーマルガーデン、ランドスケープガーデン、ウォーターガーデンと、まるで教科書を見るようで。・・・(モグラ)


  訪問日程表 (1)サン・ハウス (2)ベス・チャトー・ガーデン (3)ハドスペン・ガーデン (4)シシングハースト
(5)ヒドコートマナー (6)ブレナムパレス (7)キフツゲートコート (8)アン・ハザウェイ (9)モネの庭 (10)コッツウォルズ
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